プログラマーの朝礼
8月の理(ことわり) 【人間到る処青山あり】
To a brave man every sail forms his country.
(勇敢な人は航海ごとに故郷ができる)
東京オリンピックが始まり、連日の日本人のメダル獲得に一喜一憂している今日この頃ですが、皆様方に於かれましては如何お過ごしでしょうか。謹んで暑中お見舞いを申し上げます。今年はコロナ渦で夏休みの帰省を自粛される方も多いと思いますが、今月の「理」は帰省ネタです。「帰省」という言葉に皆さんはどんな思いをお持ちでしょうか?
8月は盆月。盆と正月は日本のニ大民俗行事です。年(とし)は365日(閏は366日) で繰り返し、年の始まりは「正月」、折り返し地点に「盆」があります。「正月」は、年の初めということもあり「希望」という言葉が似合います。一方、「盆」はというと、「感謝」という言葉がピッタリではないでしょうか。「盆」には、一家一族で先祖の霊を迎え、先祖に感謝するとともに、皆の健康と幸福を願うのが習慣になっています。
盆、正月ともなれば毎年のように「帰省ラッシュ」という話題がニュースを賑わせます。私も、19歳で上京した後、20年間、盆・正月には必ず帰省していた口です。その時、思い出していたのが、表題のことわざです:
人間到る処青山あり (じんかん いたる ところ せいざん あり)
「人間」とは「じんかん」と読み、人の暮らす世界(世間)を、「青山」とは人が骨を埋める場所のことを意味しています。このことわざは、幕末に生きた尊王譲位派の僧「月性(げっしょう)」が書いた漢詩「将東遊題壁」(まさに とうゆうせんとして へきにだいす)からの一節です。この詩は、田中角栄が好んだことでも知られています。
男児立志出郷関 だんじ こころざしをたてて きょうかんをいづ
学若無成不復還 がく もしなるなくんば またかえらず
埋骨豈惟墳墓地 ほねをうずむる あに ただに ふんぼのち のみならんや
人間到処有青山 じんかん いたるところ せいざんあり
男子が志を立てて郷里を出たならば、
学問が成就しないうちは、絶対にもどってくることはない。
骨を埋めるのは、ただ祖先の墳墓のある故郷だけだろうか。
世の中には、いたるところに青々とした墓地に適当な山がある。
帰省で故郷に戻ってくる人達の中には、志を持ち、故郷以外の場所を青山と決めている人も少なくないでしょう。そして(かつての私のように)、いつの日か故郷に帰って来ることを希望している人もいるでしょう。「盆」という民俗行事は、故郷への思い、そして祖先への感謝の気持ちを、これからもずっと、日本人に伝え続けてくれる事でしょう ・・・ そう願いたいものです。