銀の弾丸 ( Silver Bullet ) を探して
遅くまで、残業をしていて、肩がこるとき、なにがしかの、慣性を感じる。
ハードウエアの慣性は、タイソウ小さい、30年に6桁進む。
ソフトウエアのそれは、タイヘン巨大だ。
ソフトウエアの生産現場では、この慣性のために、身動きがとれない。
現場は、30年前と、どのくらい変わっただろうか。
人月の神話は、まだ、残っている。
Brooksは、この巨大な慣性の化け物を、狼男と呼んでいる。
我々は、この狼男に立ち向かって、いかねばならない。
武器は、あるのか。
Brooksは、無責任にも、「武器は存在しない」、と言っている。
しかし、我々は、銀の弾丸を、探さねばならない。
銀の弾丸は存在するのか。
上の詩は、15年前、私が書いたものです。1992年4月の事です。
狼男はご存知かと思いますが、狼男をやっつけるには、銀の弾丸を使います。これは、まあ、小説の中での話ですが、コンピュータソフトの世界でも、ソフトウェア開発に関わるいろいろな問題点を狼男と呼び、その問題点を解決する手段や方法論を銀の弾丸と呼ぶ事があります。
銀の弾丸の由来は、
「F.P.Brooks,Jr.; No silver Bullet - Essence and Accidents of Software Engineering, IEEE Computer 20-4,10-19,1987 / 20-7,7-9,1987」
です。「No silver Bullet(銀の弾丸は存在しない)」と銘打ったこの主張を
「F.P.Brooks,Jr.; The Mythical Man-Month, Addison-Wesley, 1975」
(ソフトウエア開発の神話,山内正弥訳,企画センター)
の著者として名高いBrooksが展開したことに対して大変興味深く、当時(1988年)私は、大きな衝撃を受けました。なぜなら、私がプログラマーであり続ける限り、狼男との戦いは続き、銀の弾丸を探し続けなければならないからです。
銀の弾丸は、ソフトウェア開発に携わる者にとって、いつの日か、最終的にケリをつけなければならない問題なのです。